2008年04月24日

正論 日中の友好には条件をつけよ

【正論】 日中の友好に条件をつけよ
2008.4.22 03:03 平和・安全保障研究所理事長 西原正

≪生ぬるい日本政府≫

 チベット自治区の首都ラサで起きたチベット族による反中国(反漢民族)騒乱およびそれに対する中国政府による武力鎮圧は、多くの国際非難を招き、折しも始まった北京オリンピックの聖火リレーへの妨害活動という形で、非難の意思表明がなされることになった。

 長野の善光寺では、仏教徒チベット人への同情と混乱回避のため、聖火リレーの出発点となることを辞退した。

 西側諸国の首脳の多くも8月のオリンピック開会式への不参加を表明して、中国の人権弾圧への非難を表している。7月の北海道洞爺湖サミット(G8)でも、この問題は取り上げざるを得まい。

 福田首相は来日した中国の楊潔●外相に対して、チベット問題が北京五輪に影響することのないようにと、早期解決への努力を要請したようだが、中国政府の明らかな人権弾圧を批判することはしなかった。このような生ぬるい態度では、福田首相はG8サミット議長国としての指導力を発揮することができるのだろうか。

 チベット人に対する中国の大規模弾圧は、すでに1951年、59年、89年と起きており、チベット人の漢民族への反感には深い同情を禁じえない。中国はこれまで日本のかつての満州国支配を植民地支配として非難してきたが、中国によるチベットの「中国化」は、植民地統治と何ら変わらない。チベット語を奪って中国語を押し付け、ラマ教の布教を禁じ、傀儡(かいらい)宗教指導者を立てるのは、まさに「文化的虐殺」であって、時代錯誤の植民地支配である。

≪中国内の権力闘争にも≫

 中国の指導者たちは、自分たちの統治方法が誤っていたことを心の中では認めていると思う。異民族の要求を武力で抑えて、平和な統治ができるはずがない。統治方法の転換を早期にするのでなければ、ますます自分たちの首を絞めることになる。

 経済が混乱すれば、海外投資が減り、失業者が増加して社会不安が大きくなる。またチベット問題は中国のメンツを汚すことになったし、胡錦濤国家主席を批判する絶好の材料になるであろう。外部からの中国非難は中国人を一時的には団結させるかもしれないが、チベット問題は中国内の権力闘争の引き金になるのではないか。

 チベットの件で国際社会がいかに非難しても、中国は聞く耳を持たないであろう。指導者たちは、チベットの後にウイグル人、台湾人、そして場合によっては香港人の自治ないし分離独立が待っていることを恐れているからである。しかしアチェ、東ティモール、コソボなど、世界各地の同様の紛争が実証するように、異民族の自治要求は尊重した方が結局はコストを少なくして共存できる。胡錦濤主席のいう「和諧社会」(調和社会)はどこへ行ったのだろうか。中国のオリンピック開催資格を問う前に、中国の国連安保理常任理事国としての資格を問う必要があるのではないか。

≪長野の抗議は平和的に≫

 胡錦濤主席は、5月初めと7月のG8サミットに来日することになっている。いずれの訪問でも、日本はチベット、ダルフール問題を取り上げる可能性を表明すべきである。そのことが日本の指導力を高める。

 日本が「日中友好」を重視するがために、中国への批判を遠慮するなら、日本外交は原則のない弱腰外交、位負け外交との厳しい評価を国際社会から受けるであろう。また中国からも御しやすい国として見られるであろう。いや、すでにそう見られている。

 来る4月26日に予定されている長野の聖火リレーでは、仏教界の人たちを含めて、日本人の抗議を整然と平和的手法で表明すべきである。

 日本がチベットやダルフール問題で中国を批判すれば、中国は内政干渉だと反論するだろう。しかしそれに対して日本は、「小泉元首相の靖国神社参拝の時には中国は内政干渉をしています」と言い、さらに「チベット問題は別次元の人権問題ですから、誰もが発言できるのです」と再反論すればよい。

 国家間の友好は、外交における誠実さ、および外交や国内統治原則における普遍的価値観を共有して初めて前進する。

 日本は、胡錦濤主席の訪日の機会をとらえて、まず中国が国内の抗日戦争記念館に見られるような反日教育を是正して対日友好外交の誠実さを見せること、および中国が国際社会で受け入れられる普遍的原則(少数民族の人権尊重など)に沿って外交や国内統治をすること、を条件として提示すべきである。

 福田首相に、そのような毅然(きぜん)たる態度をとる気概はあるだろうか。

(にしはら まさし)

●=簾の广を厂に、兼を虎に
posted by ディポ at 17:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 軍事・外交 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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